犬猫の”社会化期”とは?
動物が生まれてからしばらくの時間を、”社会化期”と言います。動物により多少の誤差はありますが、犬や猫の場合は生後約8〜12週間の間を、社会化期と呼びます。
犬や猫も生まれると、人間と同じように親や兄弟と一緒に育ちます。母乳には病気にならないための免疫や、健康に育つためのたくさんの栄養が含まれていて、乳児期に母乳で育った子は、健康な犬猫に育ちやすくなります。
また兄弟や母親との共同生活や遊びを通じて、「どのくらい噛んだら痛いか」「飛びかかるとお母さんに怒られる」など、集団生活を営むために必要とされる協調性やマナーを犬は犬から、猫は猫同士で、自然と身につけていきます。猫は犬ほど、グループ(群れ)で生きる動物ではありませんが、犬と同様に集団生活を通じて、社会化を身につけていきます。
他者と共生するための知恵を身につけ、そして多様な経験をすることで、様々な物事にポジティブに対応する能力を身につける、この幼少期の貴重な学びを、”社会化”と言います。
社会化期を一人で過ごすとどうなるのか?
では、生後間もない赤ちゃん動物が、ペットショップの狭いショーケースの中で、社会化期を一人で過ごすと、動物たちはどうなるでしょう?
まず、健康面で様々な心配ごとが出て来ます。
母乳で守られていない赤ちゃんが、何時間も自分の排泄物と一緒に、狭いショーケースで過ごしたり、ショーケースを叩く振動や騒音や光、寝ている時に何度も起こされて抱っこされたりと、まだ体が出来上がっていない状態で、ぬいぐるみのような扱いを毎日受けていれば、病気になっても仕方ありません。ペットショップで購入した子犬や子猫の健康トラブルは、消費者センターにも多く寄せられる相談事項となっています。
そしてペットショップの子犬や子猫の中には、栄養不足やストレス、そして母親から排泄の処理をしてもらった経験がないために、自分の排泄物を食べてしまったり、大人になってもなかなかトイレの場所を覚えられなかったりする子も少なくありません。
モチロン、人が根気よく動物に教えることも出来ますが、犬には犬の、猫には猫の、それぞれの種に最適な学び方と言うのがあるのです。人が100%犬や猫として、幼少期の動物に接するのは、到底難しいことなのです。
犬らしさ、猫らしさを身につけていない犬猫たちが、生後早い段階で人間社会に迎え入れられると、他者との距離の取り方を知らないために、手加減のない遊び方や嚙み方をして、ほかの動物や人に怪我を負わせてしまう事故が頻繁に起こります。幼少期の社会化不足(経験不足)から、些細なことでパニックになったり、防衛本能から異常に吠えたり、唸って威嚇したり、噛みついたり、引っかいたりと、人の手に負えないような問題行動を起こす個体も少なくありません。
これらは、大きくなってから正しいトレーニングを受ければ、ある程度の改善は見込めます。しかし好奇心旺盛な子供のころと違い、経験値が低いまま成長した動物たちは、用心深く、臆病で、傷つきやすくなっていて、子供なら簡単に出来たことを、なかなか習得できなかったり、ストレスを感じやすくなってしまっていて、トレーニングが理由で問題行動がいっそう悪化してしまう犬猫たちも少なくありません。
そのためアメリカやドイツ、イギリスなど様々な国では、動物達に大人になってから苦しい経験や、難しいトレーニングを強いる必要がないようにと、社会化期の間は、親兄弟と離れ離れにならないように、生後8週未満の動物を売ったり、譲ったりすることを法的に禁止するなどして、動物の未来を守っているのです。
これはペットショップで 生体展示販売をしないだけでなく、ブリーダーさんから犬猫を購入する際や、シェルターや動物愛護団体から 動物を譲り受ける際にも ”生後8週ルール”として広く浸透しています。
社会化期で学んだことは 成長しても定着します。親兄弟と 経験豊かな時間を過ごした犬猫は、落ち着いた成犬、成猫に成長しやすく、逆に未熟な社会化期を過ごした犬猫は 大人になってもストレスに弱く、人が問題と呼ぶ行動を抱えやすくなります。動物達が生涯を通じて人と安全に、楽しく暮らすために、社会化は世界の多くの国で重要視されています。
犬の社会化について動画でも学べます
アメリカの動物事情☆動画ページにて他の動物事情動画もご覧ください♬